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2026.09.25

タンスに眠る着物を掛軸へ|着物リメイク「表装」でできること

サービス理解

着物を広げた全体写真

着ないまま仕舞われた着物は、掛軸・額装・屏風という「飾れる形」に仕立て直すことができます。費用は額装20,000円〜、掛軸30,000円〜、屏風50,000円〜、納期は1ヶ月〜が目安です。

はじめまして。福井県越前市で「越前きもの表装」という工房をしております、表装師の宮守雅治と申します。このコラムでは、タンスに眠ったままの着物をどうやって作品に変えるのか、何ができて、いくらかかり、どんな着物が向いているのかを、順を追ってお話しします。ご自身の着物を思い浮かべながら読んでいただけたら幸いです。

「着ないけれど捨てられない」着物に、もう一つの道がある

着る・手放すの二択のほかに、「飾れる形に仕立て直して手元に残す」という第三の道があります。私たちはそれを表装という技術でお手伝いしています。

工房にご相談くださる方の多くが、最初に同じ言葉を口にされます。「もう着ることはないと思うんです。でも、捨てられなくて」。お母様の訪問着、ご自身の振袖、お祖母様の帯。着物は衣服であると同時に、その人の記憶が染み込んだものです。だから、着ないという理由だけでは手放せない。それはごく自然なことだと私は思っています。

一方で、タンスの中に仕舞われたままの着物は、少しずつ傷んでいきます。湿気を吸い、シミが浮き、畳んだ折り目のところから絹が弱っていく。「いつか何とかしよう」と思っているあいだにも、時間は着物に対して優しくありません。

そこでお伝えしたいのが、着物を「飾れる形」に変えるという選択です。着物の柄をいかし、アートとして掛軸や額装、屏風に仕立て直す。そうすると、タンスの中で眠っていた着物が、毎日目に入る場所で暮らしの一部になります。着るものとしての役目は終えても、美しいアートとしての役目はここから始まる。私はそう考えています。

着物を広げた全体写真

表装とは──着物を掛軸・額装・屏風に仕立て永久に遺す技術

表装とは、布や紙を和紙で裏打ちして強度を与え、掛軸・額・屏風といった永く飾れる形に仕立てる技術のことです。書や日本画の世界で受け継がれてきた仕事です。

もともと表装は、書や絵を掛軸に仕立てるための技術として発達してきました。紙や絹はそのままでは薄く、波打ち、永く保存し飾ることができません。そこで裏側に和紙を貼って(これを裏打ちと呼びます)一枚のしっかりした芸術品に仕立て、周囲に裂地を廻し、軸や額の形に組み上げていきます。
当工房では、この伝統技術を着物に応用しています。着物をほどいて一枚の反物に戻し、柄の見どころを選び、和紙で裏打ちして、掛軸・額装・屏風に仕立て直す。裏打ちに使うのは、和紙でユネスコ無形文化遺産に登録された越前和紙も材料のひとつとして活用しています。丈夫でしなやかな和紙が、絹の柔らかさをそっと支えてくれます。

絹に裏打ちを施した瞬間、布の表情が変わります。歳月や使用感で傷んだ絹糸がすっと張りを持ち、それでいて絹本来の光沢が戻ります。刷毛で空気を追い出しながら和紙との一体感を出します。着物の素材と糊とその水分を検討、手のひらに伝わるわずかな感触で調整判断をし仕上げていきます。この一手間が、着物を和服から「きものアート」に変えるのです。

同じ着物からできた表装の業を使った作品達を見ていただくと、想像がつきやすいかと思います。

同じ着物からできた掛軸・額・屏風の完成作品

どんな着物が作品になるのか(振袖・打掛・訪問着・帯・形見の着物)

一枚の着物から柄物の着物まで作品に使うことができます。打掛・振袖・白無垢等花嫁が着飾る花嫁から留袖・色留袖・付下訪問着・色無地・喪服・丸帯袋帯等の礼服はもちろん、大島や結城など普段着の着物や浴衣などなど。多少傷みのある着物でも、新しい品古い品を問わずお仕立は可能です。古くてもそれが魅力に感じさせるのが表装の業です。。

よくお預かりするのが、次のような思い出の品々です。

[御姉妹或いはお母さま等の振袖]
御姉さん・妹さん・従姉妹さん皆さんが順番に着飾った成人式の振袖。着物全体が絵画のようなような華やかな総絵羽の着物は幾通りにもの形に仕上げられます。

[祖母ちゃん・お母様・ご自分の留袖留袖・色留袖]
裾模様華やかな留袖や色留袖はご家族やご親戚の結婚式で着られた皆様共通の思い出の品です。家紋が入った着物はお家の顔として玄関等に飾ると映えます。

[訪問着・付下げ]
裾模様や肩の柄など、絵として完成された部分を持っています。落ち着いた作品に仕上がります。お宮参り・七五三・入園卒園・入学卒業など一家の楽しい思い出がいっぱいの品はご両親にとってもお子さんにとっても大切な品です。

[旧家の花嫁衣裳]
ご自前の花嫁衣裳。打掛や振袖を誂えたお話はよくお聞きしました。織物や刺繍のお着物が多いのですが映えます。

[丸帯・袋帯・名古屋帯]
壁や棚の上に引くだけでそのまま素敵に利用できるのが帯です。私は長く利用できるように表装(裏打ち)をして使います。名古屋帯の場合は文様が背中と前の方だけです。
柄が少ない分絵画のような文様となり意外と素敵に仕上がります。

[普段着の紬物や浴衣もオシャレに]
普段着や遊び着としてリラックスして家族や友人たちと過ごした思い出の品が紬や浴衣です。何気なくオシャレして楽しんだひと時は記憶に遺したい忘れられない思い出です。

[形見の着物]
逢ったことのない祖父母や曾祖父母など今の私達にとって大事な方々です。私は家庭の中で会ったことのない大切な先祖の話(ファミリーヒストリー)を後の子供達に伝えていくことこそ大切だと思います。

着物は作者の格等だけで価値が変わるとは思いません。下取り店の査定で値もつかないと言われる着物が表装により誰ものも目を引く家宝になる。そんな表装を目指しています。
状態に不安がある場合は手放す前に一度見せていただければと思います。

掛軸・額装・屏風、それぞれの費用と納期の目安

費用の目安は製作する作品のサイズや表装の種類により決まります。
参考ですが縦350mm・横350mm・幅15mmの作品を想定して
額装20,000円〜、掛軸30,000円〜、屏風50,000円〜です。
小さな作品(コースター・古ふくさ・飾り箱・スマホケースetc)であればお手頃な価格も可能です。

納期はいずれも1ヶ月〜。仕上がりサイズや仕様によって変わります。

仕立て方には、それぞれ違いがあります。

・額装(参考価格20,000円〜)
伝統的な日本額(平貼額)です。襖(ふすま)の下地のように木製の組子(くみこ)に紙を何重にも上張りした平らな土台に裏打ちした作品をそのまま貼り付けます。凹凸がなく、すっきりと美しく仕上がります。絵画と同じ感覚で壁に掛けられるので、洋室やマンションにもなじみます。
・掛軸(30,000円〜)
床の間はもちろん、お部屋の壁に金具ひとつで飾れます。巻いて収納できるため、季節や気分で掛け替える楽しみがあります。着物とその持つ独特の和の魅力を十分に活かします。
・屏風(50,000円〜)
お部屋を仕切るのに相応しい作りです。大きく描かれた総絵羽の着物をなどは文様に絵画のような迫力があり活かせる仕立てです。空間そのものの雰囲気を変える存在感があります。私は二曲屏風に仕上げます。
・生活の中で身近に使われる品々を表装で仕上げることもお勧めしています。
例えばコースター・スマホケース・古ふくさ・化粧箱等etc)

掛軸・額装・屏風の3種を並べた写真

納期は1ヶ月〜を目安にお考えください。着物をほどき、洗い、裏打ちをして乾燥させ、仕立てて仕上げる。それぞれの工程に、布と糊が落ち着くための時間が必要です。贈り物などお渡し日が決まっている場合は、早めにご相談いただけると安心です。
洗い張りを希望される場合は別途料金が必要となります。

お支払いは銀行振込とPayPalに対応しており、全国発送・海外発送も承っています。福井の工房ですが、ご依頼は全国どこからでも同じようにお受けできます。詳しい料金の内訳は、料金案内のページもあわせてご覧ください。

「着物を裁断する」ことへのためらいについて、職人の考え

ためらいは自然な感情ですので、無理に決める必要はありません。ただ私は、切ることは終わらせることではなく、着物に新たにきものアートとして命を吹き込むことです。

「着物に鋏を入れるなんて」と、ご相談の席で言葉に詰まる方は少なくありません。私はそのためらいを、大切な感情だと受け止めています。ためらいがあるのは、その着物に本当に思いがあるからです。
そのうえで、私の考えをお話しさせてください。着物は反物という一枚の染色された布から仕立てられ、ほどけばまた一枚の反物に戻ります。着物の形は、反物の一生のなかのひとつの姿にすぎません。仕立て直しを重ねながら布反物を長く使い継いできたのが、もともとの着物の文化です。表装は、その受け渡しの新しい伝承の形だと私は思っています。
それでも迷われる方には、「まだ決めなくていいですよ」とお伝えしています。実際、最初のご相談から一年近く考えられて、それからご依頼くださった方もいらっしゃいます。着物は逃げません。ご自身の気持ちが追いつくまで待つことも、着物との正しい付き合い方のひとつです。
なお、着物全体を切り刻むわけではありません。柄の見どころを選んで切り取り、残りの布は捨てずにお返しします。また生活の中で活かすものに作り替えることも出来ます。
「全部を作品にしなくていい、全部を手放さなくていい」というのも、表装という選択の良いところです。

ご相談から完成までの流れ

最初のステップは、着物の写真を送っていただくことです。写真での見立てとお見積もりまでは費用がかかりません。そこから先の流れは五つの段階に分かれます。

おおまかな流れは次のとおりです。
・写真でのご相談
スマートフォンで着物を広げて撮った写真を1枚お送りください。どの柄が作品になるか、仕上がりの候補と概算をご返信します。
・お見立て
掛軸・額装・屏風のどれにするか、柄のどこをどのように使うかを一緒に決めます。迷われている段階のご相談も歓迎です。
・着物のお預かり
工房へのお持ち込みのほか、宅配便でのお預かりもできます。梱包の方法はその都度ご案内します。
・制作
ほどき、柄合わせ、裏打ち、仕立てと進めます。制作の途中経過はLIENなどででご報告しますので、遠方の方もご安心ください。
・お届け
完成した作品を、飾り方のご案内とともにお届けします。

タンスに眠る着物を掛軸へ|着物リメイク「表装」でできること
タンスに眠る着物を掛軸へ|着物リメイク「表装」でできること
工房での作業風景

工房は福井県越前市幸町1-13のキロクルSTUDIOにあります。お近くの方は、実物の作品を見ながらお話しすることもできますので、お気軽にお立ち寄りください。

よくあるご質問(遠方・状態が悪い・柄選び)

遠方の方も、状態に不安のある着物も、柄をどのように活かすか決めかねている方も、いずれも問題なくご相談いただけます。多くのご質問にお答えします。

Q. 遠方に住んでいますが、依頼できますか。
A. はい、全国どこからでもご依頼いただけます。写真でのご相談、宅配便でのお預かり、制作途中の写真報告、完成品の発送まで来店なしで完結できます。海外発送も承っており、お支払いは銀行振込のほかPayPalもお使いいただけます。

Q. シミや汚れのある着物でも大丈夫ですか。
A. 多くの場合、大丈夫です。着物の全面を使うわけではないので、状態の良い部分を選んで仕立てられます。シミの状態によっては対応をご提案しますので、まずは写真でシミの箇所も含めて見せてください。

Q. どの柄を使えばいいか、自分では決められません。
A. 決めてからご相談いただく必要はありません。着物を広げて全体を拝見し、「この部分が一番活きます」という職人としての見立てをお伝えします。最終的にどこを残すかは、お話ししながら一緒に決めていきましょう。

Q. 費用はいくらから考えればいいですか。
A. 額装20,000円〜、掛軸30,000円〜、屏風50,000円〜が基本の目安です。サイズや仕様で変わりますので、写真拝見のうえ概算をお出しします。

ここまで読んでくださって、ご自身の着物やご家族の着物を思い浮かべた方もいらっしゃると思います。まずは、その着物の写真を1枚お送りください。どの柄が作品になるかを見るだけのご相談、依頼するかどうか決めていない段階のご相談も歓迎です。お見立てには費用はかかりません。タンスの中の一枚に、もう一つの道があるかどうか、一緒に見てみませんか。

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